見えないリスクに人は弱い。セキュリティの“抜け穴”をつくる、3つの心理バイアスとは?

【見えないリスクに人は弱い】

セキュリティの抜け穴をつくる、3つの心理バイアスとは?

 

USB充電スポット、便利だよね」「無料Wi-Fi、出張先で助かる」
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でもその便利さ、ちょっとだけ立ち止まって考えたことはありますか?

スマートフォンやPCなどの情報デバイスが日常に溶け込む今、私たちは“無意識のうちに”リスクに近づいていることがあります。そこには人間の行動心理がつくり出すセキュリティホール(穴)があるのです。

見えないリスクは、なかったことにされやすい【正常バイアス】

 

「これまで大丈夫だったから、今回もきっと大丈夫」
「身近で聞いたことないし、自分には関係ないでしょ」

これは「正常バイアス」と呼ばれる心理効果です。

災害時によく話題になりますが、セキュリティ対策においても大敵です。

◆災害時に正常バイアスが働くと判断力を鈍化させ「これくらい普通の範囲」と認識してしまう現象。『恒常性バイアス』、『正常化の偏見』などとも呼ばれます。

 

これを、情報セキュリティに置き換えてみると。。。

たとえば、公共のUSB充電スポット。

実は充電ケーブルを通じてスマホ内のデータを抜き取られるジュースジャッキングという攻撃手法があります。手法の詳細は別記事にしたいと思いますが、そこにリスクがあります。
でも、多くの人が「これまで問題なく使えていたから」「公共の場が提供してくれているのだから安心だろう」と無警戒に使ってしまいがち。

 

「公共の場」というユーザー側の『みんな使うから安心』という『恒常性バイアス』、『正常化の偏見』『正常バイアス』というものが影響しやすいのです。

“犯人”はそれを別角度から見ている。

 

これは「不特定多数が利用し紛れられる」絶好の犯行現場という「犯人側の安心フィルター」にもなるわけです。

『みんな使うから安心』を『みんな警戒しているから使わない』に変えるには、地道な教育が重要です。

誰がやるのか分からないリスクは、軽視されがち【責任の希薄化】

 

USB充電を使ってスマホ情報を盗む人なんて、身近にいないし」
Wi-Fiでの盗聴?どこの誰がそんなことやってるの?」

そう思う人も多いかもしれません。

その裏には、近年、サイバー攻撃の加害者像は、個人のハッカーではなくビジネス化された組織的犯行へと変化していることも影響していると考えられます。犯人像が曖昧なことで、被害リスクを現実のものとして実感しづらくなってしまうのです。

このような「よくわからない攻撃者」に対して、人は「リアルに感じにくい」。リアルに認識できないものにわざわざ自分の責任を背負おうとする人は稀です。これが責任の希薄化による『傍観者効果』ともいわれる現象です。

自分の行動が何かを変えるとは感じにくく、結果として「誰かが対策してくれるだろう」「自分が対策することではない」という傍観者効果が働くのです。

こうした心理的バイアスが、私たちの認識からリスクを遠ざけてしまう構造を生み出しています。
まさにそれが、「見えないリスク」の正体。

今一度、自分には関係ない、と思い込んでしまうその感情が、セキュリティの最大の脆弱性となり得ることを意識したいものです。

 確率が低そうなことは、無視される

【確率の無視】

 

USB充電で情報漏えいするなんて、何万分の一の話でしょ?」
「そんなレアケース、気にしてたらキリがないよ」

たしかにそうです。でも、重要なのは被害にあったときの深刻度
サイバー攻撃のリスクは、一度起きれば業務停止や信用失墜につながるものばかり。

人は「発生率が低そうなこと」は軽視しがち。これが「確率の無視」です。
しかし、ビジネスにおいては影響力 × 発生確率=リスクの大きさであることを忘れてはいけません。

 心理バイアスがセキュリティ対策の抜け穴になる

 

人の心理は便利さや楽観思考へと自然に流れがちです。
それが、見えないリスクへの無自覚なドアの開放になってしまうものなのです。

情報セキュリティ対策において大切なのは、行動心理バイアスを理解した上で、あえて手間をかける仕組みを組み込むこと。たとえば:

  • 公共充電は“USB”ではなくコンセント直差し
  • 添付ファイルは一旦ローカルに保存し、ウイルスチェック後に開く
  • 従業員教育で「心理バイアスとリスク意識」をセットで伝える

といった「少しの工夫」が、重大な情報漏えいの未然防止につながります。

 

「ツールだけでは守れない」――全従業員の意識が企業の復旧力を左右する

 

セキュリティ対策というと、どうしても「ツール導入」が注目されがちです。
でも本当に大切なのは、社員一人ひとりの“心の向き”。
サイバー攻撃が起きたとき、どれだけ早く立て直せるかは、全員がどれだけ当事者意識を持っているかにかかっています。

では、その「心の向き」はどうやって整えていけばよいのでしょうか。
ここで見落としてはならないのが、人間の心理に潜む“バイアス”の存在です。

セキュリティ担当者・経営層・社員それぞれが、
この「心理バイアスとの付き合い方」を正しく理解すること。
そしてその理解をもとに、社内ルールや教育、日々の運用へと落とし込んでいくこと
それこそが、これからの時代に求められる情報セキュリティ対策の本質と言えるのです。

 

目に見えないリスクこそ、立ち止まって考えるクセを。

「大丈夫だと思ってた」
「気づいたときには遅かった」

そうなる前に、今一度、あなたの周りの当たり前を見直してみませんか?
あなたのその一歩が、会社全体を守る大きな一歩になります。

“当たり前”の中にいては何が「見えないリスク」なのか自分で判断しにくいですよね?

是非、一度チェックしてみませんか?「診断依頼」とお問合せください。