実際の個人情報漏えい事例に学ぶ

個人情報保護の重要性

No.20220920:ニトリに学ぶ 事例「モバイルアプリからの個人情報漏えい」

2007年にiPhoneが発売されてから、誰でも「アプリ」開発ができるようになりました。

今年は2025年、あれから17年。

アプリへの不正アクセスによる大規模な漏えい事件は後を絶ちません。

 

2022年にあるモバイルアプリが約13万のユーザーの個人情報に不正アクセスされたことで、お詫びの通知を出したことがありました。

JAPHICという個人情報保護に関する第三者認証マークの主任審査員をしている私が、13万の漏えいに対して「少ない」と感じてしまうほど、最近の漏えい事例における漏えい数は数百万、数千万の単位で発生しています。恐ろしいバグ。慣れてはいけません。

 

さて「No.20220920.ニトリの事例」を見ていきましょう。

事件の概要:

  • 発生期間: 2022915日から920日までの間に、不正アクセスが確認されました。
  • 不正アクセスの手法: 他のサービスから流出したユーザーID(メールアドレス)とパスワードを用いた「リスト型アカウントハッキング(リスト型攻撃)」が行われたと推測されています。

ニトリHD

  • 影響範囲: 132000のアカウントが不正ログインの被害を受けた可能性があります。
  • 漏洩した可能性のある情報: メールアドレス、パスワード、会員番号、ニトリメンバーズの保有ポイント数、氏名、電話番号、住所、生年月日、性別、建物種別(戸建、集合住宅)、エレベーター有無、一部が目隠しされたクレジットカード番号、有効期限などが含まれます。

 

ここで、ご自分の胸に手を当てて目を閉じて思い出してください。

あれやこれやの「ID+パスワード」どう管理されていますか?

 

今胸に手を当てながら「パスワードの使いまわしはいけない。わかっているけど、めんどうくさい」という頭の裏の隅の方にこびりついた、罪悪感にも似た感情が沸き上がってきたそこのあなた。

この「リスト型アカウントハッキング(リスト型攻撃)」に対して、あなたのセキュリティレベルは脆弱と言わざるを得ません。

 

では、その「めんどうくさい」に具体的にどう対応したらよいのでしょう。

 

まずは個人ができる対策。

  1. パスワード管理の徹底
    • 独自なパスワードをサービスごとに設定する(他のサービスで流用しない)。
    • パスワードを定期的に変更する。
    • 長く複雑なパスワードを使用(英字・数字・記号を組み合わせる)。
    • パスワード管理ツールを利用して安全かつ効率的に管理。
  2. 二要素認証(2FA)の設定
    • 利用可能な場合、二要素認証を有効にすることで、IDとパスワードだけで不正ログインされるリスクを減らす。
  3. 怪しいメールやリンクに注意
    • フィッシングメールに注意し、不審なメールのリンクをクリックしない。
    • 公式サイトや正規のアプリを利用してログインする。
  4. 定期的な情報確認
    • 自分のメールアドレスやアカウントが他のサービスで漏洩していないか確認する(例: Have I Been Pwned)。
  5. アカウント異常を即時確認
    • ログイン履歴や通知を確認し、不審な動きを早期に察知する。

 

試しにHave I Been Pwnedやってみてください。かなりの率でPwnedされているのではないでしょうか。

だから身に覚えのないところから不要なメールが届くのね。

 

ではないのです!

パスワード管理の重要性はわかっているけど動けないあなたに。大事なのはここからです!

 

あなたのメールアドレスが侵害され、重大なデータ漏えいが発生し、資産や金銭までも奪われる可能性があるということにどれだけ危機感を抱けるか。行動に移せるよう、ここは危機感に頼るしかありません。

 

そこでワタクシ、某探偵アニメに出てくる「黒い犯人」になって、あなたを狙います。

犯人目線で描く「Pwnedされたメールアドレス悪用シナリオ」

  1. フィッシング詐欺のシナリオ

「狙いを定めたメールアドレスを手に入れるのは簡単だ。数年前に流出したデータリストをダークウェブで買った。彼らのメールアドレスには、ありふれたアカウント名やサービス名が使われている。おまけに、多くの人間がパスワードを使い回していることも知っている。

まずはターゲットが使いそうな銀行やショッピングサイトのデザインを模倣したフィッシングメールを作る。件名は『セキュリティ通知:アカウントの不正アクセスを検知しました』。恐怖と焦りで動揺した彼らは、リンクをクリックし、本物そっくりのログイン画面に自分のIDとパスワードを入力する。手に入れた情報で本物のサイトにアクセスし、彼らの口座に眠る金を引き出す。お手軽に大金が手に入る。」

  1. なりすましのシナリオ

「このアドレスを使えば、ターゲットの知人や家族を騙せる。メール内容はシンプルだ。『助けてほしい、急にお金が必要なんだ。』自分のメールアドレスから送られてきたと思い込む友人や親戚は、疑いもせず振り込んでくれる。

もし反応が鈍いなら、少し工夫する。例えば、ターゲットが家族旅行の写真をSNSに投稿していれば、そこに触れた話題を混ぜ込む。『家族旅行中に財布をなくしてしまった。お願い、すぐ助けて!』誰が疑うだろう?」

  1. リスト型攻撃で複数アカウントを乗っ取るシナリオ

「パスワードの使い回しが広く行われている以上、リスト型攻撃は無敵だ。手に入れたメールアドレスとパスワードのリストを、自動化されたプログラムに放り込む。プログラムはターゲットが使いそうな主要なサイト(GoogleAmazonNetflixなど)を片っ端から試す。少なくとも10%の成功率が期待できる。

ログインに成功したら、何ができるか?クレジットカード情報を確認して買い物する、個人情報を盗んで次の犯罪に使う。もしターゲットが会社のアカウントを使っているなら、社内データにアクセスして情報を売りさばく。成功するたびに、もう一歩ゴールに近づく気がする。」

  1. ダークウェブで情報を売るシナリオ

「私が情報そのものを使うのは手間だ。それなら、売ればいい。流出データが新しければ新しいほど価値がある。『最新、未使用のメールアドレス&パスワードリスト:10万件、BTC0.5』と掲示板に投稿すれば、数分で買い手が現れる。彼らが何に使うかなんて興味はない。ただ、自分の手を汚さず金を稼げる、それが重要だ。」

  1. スパムメールやマルウェア拡散のシナリオ

「流出メールアドレスのリストは、スパム送信者にとって宝の山だ。自動スクリプトを使って数万通のメールを一気に送る。件名は魅力的なセール情報や、思わずクリックしたくなる動画リンク。中身はただの広告かと思いきや、リンク先にはマルウェアが潜んでいる。

感染したデバイスからはさらに情報を盗むことができる。パスワード、クレジットカード情報、プライベートな写真……想像しただけで笑いが止まらない。彼らの人生が崩壊するのを眺めるのも一興だ。」

  1. パスワードリセットの悪用シナリオ

「最後の手段は、正攻法だ。彼らがどのサービスを使っているか分からなくても、メールアドレスさえ分かれば、パスワードリセットを試せる。『パスワードを忘れましたか?』のリンクをクリックして、リセットリンクをメールに送らせる。

ターゲットがパスワードリセットメールを気づかない間に、新しいパスワードに変更する。気づいたときには、すでにアカウントの内容はすべて盗まれ、証拠は隠滅済みだ。」

結末

「このようにして、流出したメールアドレスは私のビジネスの土台になる。彼らの無防備さを、高みから眺めて優越感に浸る。どんなに小さな情報でも、それが金になる。だから私は今日もまた、リストを眺めながら次の獲物を探すのさ。」

byChatGPT4o&アレンジ

 

さて、あなたは「黒い犯人」の悪事を暴き、決めセリフを叫べたでしょうか。

「パスワード管理徹底しますっ!」

 

 

注意書き:

このシナリオは完全なフィクションです。

「1,2,に引っかかる人は今さらいないよ!私は大丈夫」と思った方も、オレオレ詐欺と同様ご年配者や小中高生など自分の周りにいる大切な人達に教えてあげてください。

このコラムの目的はあなたとあなたの大切な人達を守り、よりよい情報社会を築き上げるためにあります。

現実でも類似した悪用が行われる可能性が高いため、流出したメールアドレスに対して適切なセキュリティ対策を講じることは極めて重要です。

 

因みに、JAPHIC審査では審査時にパスワードの設定基準を確認しています。

PWの強度(突破されるまでの指標)

これは2024年のJAPHIC審査員の一つの指針でした。

技術の発展に伴い、これらの犯罪と防御はイタチごっこです。

だからこそ、最新の対策が重要です。

 

「いや、12桁とか、脳みそが追い付きません。今朝も隣の部屋に行った途端なにをしに来たのか思い出せなかった脳みそレベルです」というそこのあなた!

長くなったので次回コラムで、あなたの決意を実行へ移せるよう情報共有していきます。お楽しみに!

▷次回「No.20220920:ニトリに学ぶ~実行編~」リンク